« 喪中につき | トップページ | cats and dogs »

2012年11月26日 (月)

『我が家の問題』 奥田英朗

奥田さんの小説、やっぱり好きだなあ。

これは短編が6つ入っています。

出口のない行き詰った雰囲気で始まって、最終的にどたばたに炸裂するという

この人の長編作品もすごく面白くて大好きなんだけど、

この短編集の雰囲気もとってもいいです。

いろんな家族におこる、いろんな問題。

それはすごく深刻な問題なのに当事者は意外と他人事のようだったり、

他人からしてみれば「そんなこと」って思われるようなことを

本人は実に深刻に悩んでいたり。

登場人物は皆どこにでもいる普通の人たちで、いまいち気が弱くって、

お互いに気を遣いあって暮らしている、心優しい人たち。

その優しさゆえにいろんな困ったことがおこって、どんよりしてるんだけど、

何かをきっかけに一歩踏み出して、ほろりときて、最後は心があったかくなる、

そんなお話ばかりでした。

奥田さんは、困った状況をほのぼのとしたユーモアで包みこんだ文章で

ゆるゆるの温かい雰囲気にしてしまうのがお得意だと思います。

例えば、ちょっとだけ抜粋すると。

気が利かなくて手際が悪い店員さんに、ついにぶち切れてしまった奥さん。

他の従業員や管理職まで出てきて平身低頭され、

これから叱られるであろう店員さんが急に可哀想になります。

「この男にもたぶん家族がいる。

 家のローンがあって、子供の教育費もある。

 だいたい悪気はまったくない。

 ロシアとか中国に行けばざらにいるタイプの店員に過ぎない。

 そう思ったら急に庇いたくなった。」

・・・ロシアとか中国に行けば、では思わず吹き出しましたが、

この気持ち、すごく共感してしまいました。

で、奥さんは自分が許しを請うように訴えてしまいます。

「その人のこと、叱らないでください。そんな大したことじゃないんです。

 (中略)それなのに、わたし怒ったりして、すいませんでした。

 その人、きっと悪くないと思います。だから、お願いですから・・・・・」

こういう善良な小市民の心情を描いたらピカイチの奥田さんですconfident

実際の生活の中でも、険悪な雰囲気を柔らかくしてくれる人っていますよね。

物事を、ちょっと力を抜いて、客観的に別の角度から見る余裕をもてば

毎日がもっと快適で、皆優しい気持ちで暮らせるんじゃないかなと思います。

|

« 喪中につき | トップページ | cats and dogs »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/144376/56192196

この記事へのトラックバック一覧です: 『我が家の問題』 奥田英朗:

« 喪中につき | トップページ | cats and dogs »